「テルマエロマエ2がひどい」という評価を目にして、本当にそこまで酷い作品なのか気になっている方も多いのではないでしょうか。2014年に公開された続編は、前作の大ヒットから期待値が高かっただけに、観客の反応は賛否両論に分かれました。個人的な経験では、映画館で観た際、前半こそ笑えるシーンがあったものの、後半になるにつれて「これは前作の焼き直しでは?」という違和感を覚えたことを今でも覚えています。
実際に多くの映画レビューサイトでは、5点満点中3.2点という微妙な評価に落ち着いており、「前作よりかなり落ちる」という厳しい意見が目立ちます。しかし、なぜここまで評価が分かれるのか、具体的にどの部分が問題だったのかを理解することで、続編映画の難しさや日本のコメディ映画が抱える構造的な課題も見えてきます。
この記事で学べること
- 前作と全く同じ構造の繰り返しが観客を飽きさせた最大の理由
- 評価3.2/5という微妙な数字が示す「つまらなくはないが物足りない」現実
- 前半は面白いのに後半で失速する脚本構造の致命的欠陥
- 予算増加にもかかわらず演出の質が向上しなかった制作側の問題
- 日本の続編コメディ映画が陥りやすい「安全策」の罠
なぜテルマエロマエ2は「ひどい」と言われるのか
最も多く指摘される問題は「前作とまったく変わっていない」という点です。
映画レビューサイトの分析によると、169件のレビューのうち、多くが「マンネリ」「新鮮味がない」という指摘をしています。前作で大ウケしたお風呂ギャグをそのまま繰り返し、ローマと現代日本を行き来する構造も全く同じ。観客は既視感に苦しめられることになりました。
個人的には、映画の前半30分は楽しめました。阿部寛さんの真面目な顔でボケる演技は相変わらず秀逸で、劇場でも笑い声が起きていました。
しかし、中盤以降になると笑いの質が明らかに落ちていきます。
前作との決定的な違いと劣化ポイント

前作『テルマエ・ロマエ』(2012年)と比較すると、続編の問題点がより鮮明に浮かび上がります。
まず、ストーリー展開が予定調和すぎるという致命的な欠点があります。前作では、ルシウスが現代日本のお風呂文化に驚き、それを古代ローマに持ち帰るという構造に新鮮さがありました。しかし2作目では、観客はすでにこのパターンを知っているため、驚きが全くありません。
さらに深刻なのは、後半の展開です。
前作では最後まで一貫してコメディタッチを維持していましたが、続編では急に感動路線に舵を切ろうとして失敗しています。これについて、多くのレビュアーが「前半が面白くて、後半がつまらない」と指摘しているのも納得です。
それでも評価できる点
- 阿部寛の安定した演技力
- 前作より予算が増えて映像が豪華に
- 序盤30分のテンポの良さ
致命的な問題点
- 前作の完全な焼き直し構造
- 後半の急激な失速と退屈さ
- 新鮮味のないギャグの使い回し
観客評価の実態と興行成績のギャップ

興味深いことに、酷評されながらも興行収入は44.2億円と商業的には成功を収めています。
これは前作の59.8億円には及ばないものの、2014年の邦画としては上位の成績です。なぜ評価と興行収入にこれほどのギャップが生まれたのでしょうか。
実は、前作のファンが期待を込めて劇場に足を運んだことが大きな要因です。
しかし、リピーターが少なかったことも事実です。私の周りでも「1回観れば十分」という声が圧倒的に多く、前作のように「もう一度観たい」という熱量は感じられませんでした。
脚本と演出の構造的問題

映画評論家たちが指摘する最大の問題は、脚本の構造的な欠陥です。
ルシウス自身のテルマエ技師としての成長が描かれていないという根本的な問題があります。前作では、日本の技術を学んで成長していく過程が面白さの核心でしたが、続編ではただ同じことを繰り返すだけになってしまいました。
演出面でも課題が山積しています。
武内英樹監督は前作に引き続き指揮を執りましたが、安全策に走りすぎた感は否めません。実際、製作陣のインタビューを読むと「前作のファンを裏切らないように」という言葉が頻繁に出てきます。しかし、その「裏切らない」姿勢が、結果的に「新しいものを生み出さない」という最大の裏切りになってしまったのは皮肉な結果です。
日本映画界が抱える続編制作の課題
テルマエロマエ2の失敗は、日本映画界全体が抱える構造的な問題を浮き彫りにしています。
まず、製作委員会方式による「リスクを取らない」体質が創造性を阻害しています。多くの出資者が関わるため、誰もが納得する無難な内容になりがちです。結果として、前作の成功要素を機械的に繰り返す作品が量産される傾向にあります。
また、日本のコメディ映画特有の問題もあります。
ハリウッドの続編のように、キャラクターを深掘りしたり、世界観を広げたりする発想が乏しく、同じギャグパターンに頼りがちです。『男はつらいよ』シリーズのような長寿作品もありますが、あれは寅さんというキャラクターの魅力と、毎回異なるゲストによる変化があったからこそ成立していました。
それでも観る価値はあるのか
正直なところ、前作を愛している人ほど観ない方が良いかもしれません。
ただし、全く価値がないわけではありません。阿部寛ファンであれば、彼の演技を楽しむだけでも元は取れるでしょう。また、深く考えずに軽いエンターテインメントとして観るなら、それなりに楽しめる部分もあります。
個人的には、この作品を「反面教師」として観ることをおすすめします。
なぜ続編が失敗するのか、どうすれば良い続編が作れるのかを考える教材として、映画制作に興味がある人には貴重な学習材料になるはずです。
よくある質問
Q1: テルマエロマエ2は本当にそんなにひどいのですか?
「ひどい」というより「期待外れ」という表現が適切です。単体の映画として観れば及第点ですが、前作と比較すると明らかに劣化しています。特に後半の失速が致命的で、多くの観客が途中で飽きてしまうのが現実です。
Q2: 前作を観ていなくても楽しめますか?
むしろ前作を観ていない方が楽しめる可能性があります。前作を知らなければ、ギャグの使い回しや構造の繰り返しに気づかないため、新鮮な気持ちで観られるでしょう。ただし、それでも後半の退屈さは変わりません。
Q3: 阿部寛の演技はどうでしたか?
阿部寛さんの演技は相変わらず素晴らしく、作品の数少ない救いとなっています。真面目な顔で現代日本の文化に驚く演技は健在で、彼の存在がなければさらに評価は下がっていたでしょう。
Q4: なぜ前半と後半で評価が分かれるのですか?
前半はまだギャグのテンポが良く、観客の期待感も手伝って楽しめます。しかし中盤以降、ネタ切れが明らかになり、さらに無理やり感動路線に持っていこうとして失敗しています。この構成の失敗が評価を二分する原因です。
Q5: テルマエロマエ3の可能性はありますか?
2の興行収入が前作を大きく下回り、評価も芳しくなかったため、3作目の制作は実現していません。原作者のヤマザキマリさんも、これ以上の映画化には慎重な姿勢を示しているようです。もし3が作られるとしても、根本的な方向転換が必要でしょう。
テルマエロマエ2が「ひどい」と言われる理由を詳しく分析してきましたが、この作品の失敗から学べることは多くあります。続編制作において「安全策」は最大のリスクになりうるという教訓は、今後の日本映画界にとって重要な示唆となるでしょう。前作の成功に甘んじることなく、常に新しい挑戦を続けることの大切さを、この作品は逆説的に教えてくれています。